なぜ「離島」なのか。

2013年5月に行われたプレゼンテーションカンファレンスTEDxTokyoにて、

渋谷ヒカリエの本会場とUSTREAM中継あわせて国内外の10万人が注目するなか

島について語った鯨本あつこのプレゼンテーション全文を紹介します。

こんにちは、私はクリエイターの仲間と日本の島を集めたメディアをつくっています。みなさんは日本にいくつ島があるかご存知でしょうか?

 

地球上ではオーストラリアより小さな陸地を島というのですが、日本には6852の島があります。そのなかで、人が暮らしている島は約430島。

 

東京から一番遠い有人離島は実は東京にあってこの会から南に1,000km、片道25時間半の小笠原諸島。一応東京なので車のナンバーは「品川」です。ほかにも、北は利尻島、南は波照間島、韓国の夜景が見える対馬。

 

私たちは有人離島ばかりのメディアをつくっているのですが、どうしてつくることになったのか?きっかけはふとしたことでした。3年前、私は離島に移住する友だちに出会い、その島に遊びにいくためインターネットでその島を探しました。でも、情報はあまり見つからなくて、よく分からないまま出掛けました。

 

その島は瀬戸内海にあって港からは船で30分。果物がたくさんとれるそうで見知らぬ島人にミカンをもらいました。島で会ったおじさんに、どんな島なのか聞くと、おじさんは「宝島だよ」と答えました。私たちがもらったミカンは特別なことじゃなかったようで、おじさんは朝起きて玄関先を見ると、魚や野菜がどっさりおかれているんだと、笑いました。私たちは島をいいなと思いました。

 

でもなぜ、そんな島がインターネットで探せなかったのか考えました。世の中には都会のように人やモノやコトが多い場所と島のように少ない場所があります。一方、情報の世界では都会も島も関係なく世界中の情報が集まります。そこに小さな島の情報をあげても、膨大な情報に埋もれてしまう。だから、私たちは情報の世界で島が埋もれないよう集めることにしました。

 

私たちはいろいろな島に出掛けました。絶海の孤島といわれる青ヶ島は日本で一番人数の少ない村です。天候が荒れると、数週間、船が寄りつけなくなることもあり、そうなると島の商店はからっぽになってしまいます。島の人に、大変ですねと聞いたら笑いながら、島だからねと言いました。

 

かつては罪人が島流しにされてきた八丈島。外からきた人をもてなす文化があって、今でも船の欠航が続いて帰れない人がでると島のごちそうをふるまってくれる集落があります。島々には数えきれないお祭りがあって、集落の大人達は仲間と力をあわせ行事をとりおこない、大人達の真剣な姿をみて子どもたちが育ちます。

 

古くから受け継がれている行事の多くは島の幸せを祈るものです。みんなで唄い、踊りながら、自分が暮らす島に豊穣がもたらされるように、漁にでかけた船が無事にかえってくるように、家族や仲間が健康であるように、自然や、祖先に祈っていました。

 

私たちは島々の話を集めて、ちいさな新聞をつくりました。

こうした情報はあまりなかったので、島人や、島が好きな人にも喜んでもらえて私たちはうれしかった。だけど、それ以上に気づかされたことがありました。

 

私は、九州の田舎で生まれました。18歳で都会にでて、学校にいき仕事をはじめました。都会にはたくさんのお店やモノがあり、イベントがあり、私は寝る間もなく働きながら、たくさんのものや、あたらしいことを追いかけていました。だけど時々、思うことがありました。私は何を大事にしたいんだろう?

 

彼は最近、鹿児島の離島で豆腐屋をはじめました。彼の島には高校がありません。といっても、430島のなかで高校があるのは35島だけ。ほとんどの島にはありません。

 

彼は私と同じく進学をするため都会に出ていました。そしてある時、島に帰ると建設業をしていた彼の父親が港を工事していて彼が好きだった場所がこわされていました。彼はショックをうけ、父親に「何でなんだ」と聞きました。すると父親は一言、「お前のためだ」と答えました。

 

子どもを進学させるのは簡単でなく、日本全体が少子高齢化に向かうなかで高校がない島に人が暮らしていくことは簡単ではない。でも、彼は自分の大事なものを守れるよう、島にもどり、起業して、日々奮闘しています。

 

彼らに出会い、私は大事なことに気づきました。人生で大事なのはあたらしいものや、たくさんのものだけじゃなく、どんなに小さくても自分が愛する土地や、家族や、仲間を大事にすることなんじゃないか?

 

考えてみれば、私が生まれ育った田舎にもありました。大好きな土地、家族、仲間。それはきっと、世界中の誰にとっても大事なものですが、たくさんのものごとがある世界でわからなくなっていました。

 

小さな島にはたくさんの人やモノやコトはありません。だけど、都会にいると忘れかけてしまう大事な価値観がちゃんと息づいています。それはきっと大昔から変わらなかったもので、この先も変わらない大事な価値観です。

 

 

今日、この会場にはいろいろな国から来られた人がいますが、みなさんにひとつ覚えてほしいことがあります。日本は島でできていてこの島々はみな宝島です。今日はこのことを世界中のみなさんに伝えられて嬉しく思います。ありがとうございました。